
財産開示手続において、裁判所から呼出しを受けた開示義務者(債務者)が出頭しなかった場合、この出頭しなかった事実について告発することがあります。
この「財産開示義務者の不出頭」の告発状作成のポイントについて解説します。
※実際の告発状には、本記事で解説していない作成年月日、告発人・被告発人の人定事項、処罰意思などを記載する必要があります。
民事執行法第213条(陳述等拒絶の罪)
財産開示手続において、「財産開示義務者が指定された日時・場所に出頭しない」罪については、民事執行法第213条第1項及び同項第5号に定められています。
民事執行法第213条(陳述等拒絶の罪)
第1項
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
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第5号
執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者
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上記の条文のとおり、
「執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者」は、「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」に処されることになります。
「告訴」と「告発」
裁判所から呼出しを受けた財産開示期日に開示義務者(相手)が出頭しなかった事実を警察等へ訴え出ることは、「告訴」と「告発」のどちらにあたるのかですが、この財産開示義務者の不出頭については、「告発」になります。
「告訴」と「告発」とは、捜査機関(警察等)に対し、
○告訴・・・被害者(親族)が犯罪事実を申告し、被疑者(犯人)の処罰を求めるもの。
○告発・・・被害者以外の第三者が犯罪事実を申告し、被疑者(犯人)の処罰を求めるもの。
です。
「告訴」と「告発」の違いは、誰が犯罪事実を申告するかの違いとなります。
財産開示手続は、「債権者」が「債務者」の財産に関する情報を取得するための手続です。
そのため、裁判所へ申立てをした債権者(例:お金を貸した人)からすると、財産開示期日に債務者が出頭しなかったことは、【債権者=被害者】【債務者=被疑者(犯人)】と一見捉えてしまいますが、
「財産開示義務者の不出頭」の罪は、「裁判所から呼出しを受けた財産開示期日に正当な理由なく、開示義務者が出頭しなかった」罪であり、「裁判所から指定された日時・場所に開示義務者が出頭しなかった」事実を捜査機関へ申告することは、第三者が犯罪事実を申告する「告発」にあたります。
法令で定められた手続を正当な理由なく、履行しなかった違反を第三者として、捜査機関に告発するというものです。
「財産開示義務者の不出頭」の告発事実
「財産開示義務者の不出頭」の罪は、上記の条文(民事執行法第213条第1項及び同項第5号)から
「開示義務者は、執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭しなかったこと」
です。
告発事実の記載にあたっては、
●誰が:開示義務者(被告発人)
●いつ・どこで:財産開示期日(日時・場所)
●結果:正当な理由なく、不出頭
などを各証拠資料を基に誤記なく具体的に記していきます。
なお、告発状の作成にあたっては、この「正当な理由なく」について、できる限りの疎明・主張をしていきます。
告発の事情
告発するに至った経緯などについて記載していきます。
例えば、金銭消費貸借契約(お金の貸し借りの発生時点)から財産開示手続に至るまでの事柄を記載します。
一般的に、時間の経過に沿って事柄を記載していきます。
各疎明資料などを基に記載していきますが、日付や金額などの誤記に注意しなければなりません。
なお、告発したい事実は、「財産開示期日に正当な理由なく、出頭しなかったこと」です。
告発の目的(違反事実の明示・処罰意思)を念頭に、理路整然と記載します。
立証方法
立証方法として、財産開示期日呼出状や調書などが挙げられます。
また、財産開示手続を申立てした人(一般的には告発人)も立証方法として挙げられます。
添付資料
立証方法として挙げた証拠資料のコピーなどを添付します。
「告発の事情」(告発に至るまでの経緯などの説明)において記載した事柄に関する資料やそのコピー、告発人や被告発人などの人定事項を示す資料(住民票の写し等)などを添付する場合があります。
また、告発人や参考人を立証方法として挙げた場合は、告発人などの陳述書を添付する場合もあります。
なお、「陳述書」については、告発に至るまでの詳細な事柄、告発人と被告発人の関係性などの告発状に記載していない内容を記載することがあります。
おわりに
民事執行法第213条(陳述等拒絶の罪)第1項及び同項第5号に定められた「財産開示義務者の不出頭」に関する告発状の作成ポイントについて解説しました。
告発状には、定められた様式はないものの、その作成にあたっては必ず記載しなければならない事項や語句などがあります。
また、「告発の事実」などの文章作成には、一般的な文章では見られない固有の書き方があり、告発状の作成に多くの時間を掛ける必要があるかもしれません。
弊所では、お客様から聴取した内容や疎明資料などに基づき、警察官時代に培った知識と経験を活かし、告訴状・告発状の作成を行っております。
※なお、告訴状・告発状の受理判断は捜査機関(警察)にあり、弊所は告訴状等の受理までを保証するものではありません。