その話、本当ですか!?【不法就労助長関連】

こんにちは。福岡の行政書士、樋口です。
昨今、日本に在留されている外国人の増加により、外国人就労者に対する日本人の関心、理解が徐々に高まっていることを感じますが、それでも在留外国人の違法な就労は後を絶ちません。
もちろん、違法な就労を行う外国人自身に原因がありますが、その違法な就労を許している雇用主側にも原因がある場合があります。

今回は、在留期間更新許可申請のご依頼者が語られた「不法就労助長」関連する話です。
外国人雇用において、実際に起きている問題の一例として多くの方に知っていただければと思い、本投稿をいたします。
※ 本投稿は、ご依頼者の同意を得ております。

「不法就労助長」とは、雇用主等が外国人の違法な就労を助ける行為のことです。その外国人の在留資格では働くことができない仕事や場所などにおいて、働かせたり、働けるように手助けをする違法な行為を指します。

概要

ご依頼者Aさんは専門学校を卒業後、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(在留期間1年)を持って、B会社で正社員として働き始めた。
B会社で引き続き働くために、在留期間更新許可申請を行いました。
しかし、在留期間が満了する日の3日前に不許可の結果を受けました。

日本で引き続き就労を続けたいAさんは、新たな転職先を見つけることができ、再び在留期間更新許可申請を行い、無事に許可を得ることができました。(弊事務所にて、再申請のサポートをさせていただきました。)

不許可の理由

在留期間更新許可申請が不許可となった理由は、
『AさんがB会社で行っていた業務内容が在留資格「技術・人文知識・国際業務」の活動に該当しない
というものでした。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の活動は、出入国管理及び難民認定法の「別表第1の2」に定められています。認められる活動は、簡単に言うと、大学等で学んだ専門知識や技術を必要とする業務内容であることです。
ITエンジンアや経理に従事する会社員、通訳者等をイメージしていただければと思います。

業務命令

Aさんは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」では認められない活動をしていたと判断されたわけですが、Aさん曰く、この活動、すなわち業務内容は会社から指示されたものとのことでした。
つまり、Aさんは、業務命令に従い、本来の在留資格では認められないと判断される活動をしていたことになります。

Aさんからの伝聞であり、また私が断定できる立場ではないですが、
もしAさんが従事していた活動が資格外活動であるならば、資格外活動資格外活動許可という、資格外の活動を行っても良いという許可を受けない限り、違法行為です。
また、外国人に資格外活動をする場所や仕事等を提供するなどの行為は、不法就労助長罪に当たります。
不法就労助長罪の罰則は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。

資格外活動については、資格活動をどの程度行っていたかなどにより、罰則は異なりますが、懲役や罰金が科される可能性と併せて、日本から強制的に出国させられる、退去強制の可能性もあります。
また、不法就労助長についても、もし不法就労を助長した者が外国人であれば、その外国人は退去強制される可能性があります。

資格外活動をさせた目的は?

なぜB会社はAさんに対し、Aさんの在留資格では認められない業務をさせていたのかを考えてみます。
(※あくまでAさんから聞いた話を基にした個人的考察です。)

まず『在留資格「技術・人文知識・国際業務」と資格外活動』で聞く話といえば、雇用側が在留資格「技術・人文知識・国際業務」では認められない現場作業(工事作業や仕分け作業等)をさせるというものがあります。
(もちろん外国人本人自らが故意に当該在留資格では認められない現場作業をするケースもあります。)

現業に携わることができる主な在留資格は、「技能実習」「特定技能」ですが、これらの在留資格は、監理や支援の体制等が必要となります。また就労先も指定されており、就労先を変更するには在留資格変更許可申請が必要となります。
しかし、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は基本的に在留期間を更新する許可申請などを除いては、特段大きな手続きはなく、さらに転職も自由であることから、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を虚偽申請で取得したり、当該在留資格を持つ転職者を受入れ、違法な活動が行われているようです。

しかし、Aさんから聞いた話ではAさん以外の在留資格「技術・人文知識・国際業務」で働く同僚は、その在留資格で認められる活動をしているとのことでした。
また、AさんはB会社で働いている間、ご自身の在留資格では認められない活動が続いていることを認識し、会社側へ在留資格に沿う業務内容への変更を申し立てたそうですが、会社側からの指示は変わらなかったそうです。
(Aさんは途中おかしいと思ったものの、入管等へ相談しなかったことに反省されています。)
さらにAさんの在留期間更新が不許可となったことに対し、会社側は何もフォローすることなく、
「帰国してください。」
と伝えたそうです。

以上から想像できることとして、Aさん自らも語ったことではありますが、
『Aさんを退職させるために、あえて在留資格では認められない活動を行わせた。』
ことが考えられます。

もちろん、会社側が外国人社員に対し、在留資格で認められない活動をさせることは、不法就労助長罪に当たるものですし、今後のB会社に関連する在留資格諸申請(他の外国人社員の在留資格更新許可申請等)に大きな影響を与えると十分に考えられます。
しかし、Aさんの話が本当のことだとするならば、B会社は何としてもAさんを退職させたかった、若しくは入管にバレなければ良いと考えていたということでしょうか。。。

おわりに

Aさんは会社の指示に対し、おかしいと思いながらも、その指示は守らなければならないと考えた結果、在留期間の満了日の数日前に在留期間更新申請の不許可通知を受け、日本に在留することができなく可能性がありました。
在留資格(通称:ビザ)は、外国人にとって、「命の次に大切なもの」という表現があるくらい、とてもとても大変大切なものです。

私の前職は警察の国際捜査官であり、悪事を働く外国人を取り締まってきました。
日本人にいろいろな人がいるように、もちろん外国人にもいろいろな人がいます。
ただ、日本に在留していることを自覚し、真面目に生活している外国人が雇用側の悪意により、その人生を左右されることはあってはならないことです。

本記事は、あくまでAさんが語ったことに基づいたものであり、特殊な事例だと思いますが、
このような不当な雇用により、在留資格を失うことがあったことに憤りを感じたため、記事にさせてもらいました。

ひぐち行政書士事務所のホームページ