「VISA(ビザ)」と「在留資格」

外国の方と話をする際に、「在留資格」と言っても、通じないことが多いため、在留資格のことを「VISA(ビザ)」と言い換え伝えることがあります。
また、日本の方でも、「在留資格」=「VISA(ビザ)」と捉えられている方が多いと思います。
かくいう私も外国人関連の仕事を始める前は、「在留資格」=「VISA」という認識でした。

以下、「VISA」と「在留資格」について解説します。

VISA(ビザ)

「VISA(ビザ)」は、日本語では「査証(さしょう)」です。
この査証は、外務省の所管になります。
在留資格は、出入国在留管理庁の所管です。

外国人が日本へ上陸するためには、原則、上陸前にこの査証をもらっていなければなりません。
査証をもらうためには、外国人の出身国や住んでいる国などにある大使館や領事館に行き、手続きをする必要があります。

しばしば耳にしたことはあると思いますが、外国人の国籍によっては、この査証が免除される(つまり、要らない)場合があります。
この査証免除措置は、「観光、商用、知人・親族訪問等90日以内の滞在」である『短期滞在』に適用されます。
なお、短期滞在では、『収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を得る活動』を行うことは認められていません。
『収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を得る活動』とは、簡単に言うと、会社の経営をしたり、会社でアルバイトなどをして、お金をもらうことです。
これらの活動は禁止されています。
ただし、「観光、商用、知人・親族訪問等90日以内の滞在」にあるように、「商用」として、報酬を得ない会議や打ち合わせをすることは認められています
また、外交官なども国により、査証が免除されています。

日本への上陸に際し、短期滞在の査証が免除されている国については、外務省のサイトをご参照ください。

外務省 Webサイト
ビザ免除国・地域(短期滞在)|外務省

外国人が日本に上陸する際は、原則、査証の発給を受けていなければなりませんが、この査証があるからといって、日本への上陸が認められるわけではありません。
上陸手続については、「出入国管理及び難民認定法」、略して「入管法(にゅうかんほう)」と呼ばれる法律などに定められていますが、査証はあくまで上陸に必要なものの一つ(上陸が許可される要件の一つ)です。
そのため、査証発給手続は、外国人が日本へ上陸するための事前審査のようなものとして捉えることができます。

在留資格

在留資格はその名のとおり、「在留の資格」であり、この資格がなければ原則、日本に合法的に在留することはできません。

正規の上陸手続を経て、在留資格を持って日本に在留する外国人が、特に理由もなく、この在留資格を失った状態で在留を続けると不法残留者となります。
例えば、技能実習生が失踪し、何の手続もせずに、本来許可された在留資格の活動(技能実習生として許可された場所で、許可された仕事をする活動)以外の活動をすることは、資格外活動違反(犯罪)ですし、また在留資格が取り消されたり、在留期間が経過した場合は、不法残留(犯罪)などにもなります。
不法残留は、一般的に「オーバーステイ」と呼ばれているものです。

在留資格についてのイメージを持ちやすくするために、外国人が日本へ上陸(入国)するまでの一般的な流れを簡単に書いていきます。

一般的な上陸までの流れ

例えば、外国に住む外国人がITエンジニアとして、日本の会社に就職して働く予定だとします。
日本でITエンジニアとして働く在留資格として、一般的に、在留資格「技術・人文知識・国際業務」、略して「技人国(ぎじんこく)」が考えられます。(その他にも、外国人の年収や学歴などにより、在留資格「高度専門職」が考えられます。)
そのため、この外国人は在留資格「技人国」を取るための手続を進めていくことになります。

なお、在留資格「技術・人文知識・国際業務」のような働くことに特化した在留資格は、通称「就労ビザ」と呼ばれることがあります。
ここでも、「在留資格」と「VISA(ビザ)」の意味が混同して扱われています。

在留資格認定証明書交付申請

就労予定の外国人と会社が雇用契約などを締結した後、在留資格を得るために「在留資格認定証明書交付申請」という手続を行います。
名前のとおり、「在留資格認定証明書」を入管(にゅうかん)から交付してもらうための申請です。
この手続において、申請人である『外国人』や就労予定先である『会社』、『就労予定の仕事内容』などについて、入管から審査を受けることになります。
在留資格認定証明書交付申請は、査証発給申請と同じく、日本への入国を認めるかの事前審査と捉えることができます。

審査の結果、問題がなければ、「在留資格認定証明書」が交付されます。
なお、「申請人」は外国人ですが、一般的には、まだ日本へ入国していない状態です。
そのため、就労予定先の会社の人が外国人(申請人)の「代理人」となり、外国人に代わって手続を進めていきます。
在留資格認定証明書は、会社の人(代理人)に交付されます。
この在留資格認定証明書を外国人へ送付します。

少し話がそれますが、従来、在留資格認定証明書は書面で交付されていました。
この在留資格認定証明書は、次に話す「査証申請」において必要な書類であるため、その書面(紙)を外国人へ送付する必要がありました。
しかし、2023年3月からオンライン申請をした場合や申請時に申出をしたなどの場合、電子メールによる在留資格認定証明書の受領が可能となり、その電子メールを外国にいる申請人へ転送すれば、わざわざ書面(紙)を送付する必要はなくなりました。
また、書面で交付を受けたとしても、その書面をスキャンし、データ化したものを外国にいる申請人へ送付することも可能となりました。
これは、次に話す「査証申請」に在留資格認定証明書が必要なためですが、転送した電子メールの提示(見せる)や在留資格認定証明書のコピーの提出でもよくなったためです。(原本でなくてもよくなりました。)

なお、VISA(査証)のところで書いた「短期滞在」は、「在留資格認定証明書交付申請」の手続をしません。
「在留資格認定証明書交付申請」の手続を踏まずに、下記の査証申請を行います。

査証(VISA)申請

外国人は、在留資格認定証明書(電子メールを含む。)を受け取った後、日本国大使館や領事館で、在留資格認定証明書や旅券(パスポート)などの必要書類を提出・提示し、査証(ビザ)発給の申請をします。

なお、査証申請は、外国人本人や代理人、日本国大使館・領事館が承認している代理申請機関、JAPAN eVISAサイトを利用したオンライン申請で行うことができます。いずれの方法で申請ができるかは、国・地域によって異なります。

査証の発給を受けた後に、いよいよ日本へ向けて旅立ち、空港などにおいて、入国審査官による上陸審査を受けることになります。

上陸審査(入国手続)

空港などにおいて日本へ合法に入国するために上陸審査を受けます。
このときに、旅券(パスポート)や査証(ビザ)、在留資格認定証明書が必要になります。

上陸審査において問題がなければ、在留資格「技術・人文知識・国際業務」として日本での在留が許可されます。
つまり、査証(ビザ)などを提示することで、在留資格が得られるというものです。
査証は、在留資格を得るための要件であり、「査証(VISA)」=「在留資格」ではありません。

なお、上陸手続終了後に在留カードが交付されます。(空港によっては、後日郵送となる場合があります。)
在留カードには、外国人の人定(氏名・生年月日・国籍等)や在留期間が記載されています。
住所については、「住居地を定めた日から14日以内」に市役所などで住居地の届出を行う義務があり、この届出をした後に、在留カードの裏面に住所が記載されます。

おわりに

「VISA(ビザ)」は、日本で在留するための「在留資格」を取るために必要なものの一つです。

通常の会話では、明確な区別をして話す必要はないかと思いますが、「VISA(査証)」と「在留資格」という用語は、全く異なるものです。
外国人のなかには、「在留資格」という言葉を知らずに「VISA」として会話することが多くあります。

本記事が外国人共生活動などに興味がある方や現に外国人と関わりを持たれている方の参考になれば幸いです。

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