主な在留資格の概要

日本に在留している外国人は、何らかの在留資格を持って、日本に在留しています。
在留資格は、通称「VISA(ビザ)」と呼ばれているものです。
【補足:「在留資格」と「ビザ」の違いについて

外国人と交流した際などに、在留資格の話をする機会があるかと思います。
外国人にとって、「在留資格」は日本に住むための絶対条件であり、大変大切なものです。
もし万が一「在留資格」を失ったりすると、原則日本に在留することはできません。

外国人と話しをするなかで、外国人から自身の在留資格について話をされることや仕事について話をすることなどがあるかと思います。
そのようなときに、在留資格について、ちょっとした知識があった方が話が円滑になります。
また、外国人本人の在留資格で認められている活動以外の活動は、特別な許可を得ない限り、原則「資格外活動」という違法行為になります。
例えば、「あの人が副業したいと言っていたから、ちょっとした仕事を紹介してあげよう。」という善意も、場合によっては違法行為になります。
本人のためにならないだけでなく、仕事を紹介をした人も違法行為を助長した罪に問われる可能性があります。

外国人にとって重要な在留資格の概要について、いくつかの在留資格をとり上げて解説します。

在留資格別の外国人数

出入国在留管理庁(入管)の資料によると、令和6年(2024年)6月末時点における在留外国人数は、約359万人であり、過去最高を更新しています。
在留資格別に人数が多いものから並べると「永住者」、「技能実習」「技術・人文知識・国際業務」「留学」「家族滞在」の順になっています。
また、在留外国人数全体における割合は、
「永住者」  約25%
「技能実習」約12%
「技術・人文知識・国際業務」約11%
「留学」 約10%
「家族滞在」約8%
です。

上記の5つの在留資格だけで、約237万4千人となり、在留外国人数全体の約66%を占めます。

出入国在留管理庁のwebサイト
令和6年6月末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁

「在留資格」と「行うことができる活動」

各在留資格には、その在留資格で「行うことができる活動」やその在留資格の「身分または地位」について定められています。
この規定は、出入国管理及び難民認定法(入管法:にゅうかんほう)にあります。
入管のホームページに「在留資格一覧表」があり、「在留資格」と「本邦(日本)で行うことができる活動」、「該当例(具体例)」などがまとめられていますので、詳しくは下記のサイトをご参照ください。

出入国在留管理庁のwebサイト
在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁

ここで、在留外国人の約66%を占める上位5つの在留資格に焦点を当て、それぞれの在留資格で行うことができる活動などをみていきます。

<留意点>
各在留資格で行うことができる活動以外の活動をすることは、原則「資格外活動」として違法行為にあたりますが、行おうとする活動について「資格外活動許可」を受けている場合は、違法行為には該当しません。つまり、全ての資格外活動が違法なわけではないことにご留意ください。

在留資格「永住者」

永住者には、就労制限がありません。
一般的に、外国人が転職する場合は、在留資格に十分留意する必要があり、在留資格によっては在留資格変更許可申請などの煩雑な手続が必要な場合があります。
例えば、ある会社で働いていた外国人が転職をした場合、転職先の仕事内容などが外国人の持っている在留資格で認められたものではない、と判断された場合、最悪その外国人は在留資格を失い、日本に在留することができなくなります。一大事です。
しかし、永住者は就労制限がなく、日本人と同様に転職などをすることができます。

また「在留期間」は「無期限」です。
一般的に、在留資格には在留期間が定められています。
在留期間とは、その期日までは日本に合法的に在留できますというものです。
そのため、在留期間が過ぎる前に在留期間更新許可申請という手続をしないといけないのですが、「永住者」はこの手続をする必要がありません。
この在留期間の更新も、許可されなかった場合は、原則、日本に在留することはできません。一大事です。
永住者は、在留期限(在留期間の制限)がありません。
(在留カードの有効期間更新はしなければなりません。)

なお、先に紹介した「在留資格一覧表」には、「本邦において行うことができる活動」ではなく、「本邦において有する身分または地位」として定められており、その内容は「法務大臣が永住を認める者」となっています。

在留資格「技能実習」

技能実習制度において、技能実習生として活動する人たちが持つ在留資格が「技能実習」です。
「技能実習制度」は、2027年6月までに廃止され、新たに「育成就労制度」が開始されます。

在留資格「技能実習」で行うことができる活動は、技能実習計画に基づいて行う活動(技能実習)であり、それ以外の活動は認められていません。
簡単に言うと、技能実習先以外での就労は認められていません。
しかし、極めて一部ですが、技能実習生が仕事が終わった深夜や休みの日に飲食店や実習先以外の会社で働き、資格外活動で逮捕されるケースがあります。
上記のような場合は、雇う側も働かせてはいけないのをわかっていながら働かせる悪質なものもありますが、たとえ知らなかったとしても、雇い主などは「過失がない場合を除いて」、不法就労助長罪等に問われます。
調べてなかった、知らなかったではすまないということです。

たとえ善意であっても、技能実習生に副業の紹介をしたり、させたりしてはいけません。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、略して「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれるもので、就労資格の代表的な在留資格です。就労資格は、通称「就労ビザ(VISA)」と呼ばれています。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」で行うことができる活動は、大学等で学ぶ「技術若しくは知識を要する業務」又は「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」に従事する活動です。
イメージとしては、オフィスで働くような仕事で、ホワイトカラーと呼ばれる職業がこの活動にあたります。
製造ラインや建築現場での作業などは、一般的にこの在留資格で認められた活動ではありません。
もちろん、現場で稼働するエンジニアでも、その業務が学術上の専門知識を必要とされる業務であれば、この在留資格に該当する活動になります。

先の「在留資格一覧表」に該当例が挙げられていますが、
機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等
が、この「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行う職業にあたります。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の名前のとおり、「技術型」「人文知識型」「国際業務型」で行うことができる活動や在留資格を得るために満たすべき要件(学歴や実務経験など)がそれぞれ定められています。

在留資格「留学」

日本語学校や専門学校、大学などで学ぶ留学生の多くが、この在留資格「留学」をもって在留しています。
この在留資格で行うことができる活動は、学校で教育を受ける活動です。

在留資格「留学」は、非就労資格ですので、この在留資格では仕事をすることはできません。
ほとんどの留学生がアルバイトに従事していますが、アルバイトをしている留学生は「資格外活動許可」を受けて就労をしています。
「資格外活動許可」とは、「在留資格で認められている活動」以外の活動を許可するというものです。
在留資格「留学」で認められている活動は、「学校で教育を受ける活動」ですので、それ以外の活動(アルバイト)をするためには、資格外活動許可を受ける必要があります。

資格外活動許可には、包括許可と個別許可があります。
大多数の留学生は包括許可という「1週について28時間以内の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」の許可を受けています。
風俗関連営業の仕事に従事することは禁止されており、風俗関連営業をしている施設での清掃業務などであっても禁止されています。
また、資格外活動の包括許可を受けていても、本来の活動である「教育を受ける活動」を阻害する活動は認められていません。
なお、個別許可は、個別具体的な条件(仕事内容・場所・時間などの指定)のもとに資格外活動を許可するものです。
(参考:留学生のアルバイトを雇用する際の注意点 | 福岡の行政書士(元国際捜査官)のブログ

留学生の多くは在留資格「留学」で在留していますが、留学生のなかにも在留資格「家族滞在」や「日本人の配偶者等」、「定住者」、「永住者」などの在留資格をもって学校教育を受けている人もいます。
留学生は、在留資格「留学」であることが多いですが、それ以外の在留資格の場合もあるということです。

家族滞在

在留資格「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」、「技能」、「特定技能2号」、「留学」などで在留している外国人から扶養を受けて日本に在留する配偶者(夫・妻)や子供向けの在留資格が「家族滞在」です。

在留資格「経営・管理」は会社の経営者や管理職、「技能」は料理人などの活動が該当します。
「特定技能2号」は、「特定技能1号」の上位資格です。
「特定技能1号」では、外国から家族を呼ぶことはできませんが、「特定技能2号」では、条件を満たせば、家族を呼んで一緒に生活することができます。

「家族滞在」で行うことができる活動は、本体となる「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格をもって在留する者の「扶養を受ける」配偶者又は子として行う「日常的な活動」であることから、就労は禁止されています。
ただし、在留資格「留学」と同様に「資格外活動許可」を受けての週28時間以内のアルバイトなどは認められています。

なお、外国人の配偶者や子であれば、必ずしも「家族滞在」の在留資格とは限りません。
例えば、共働きで夫婦ともに「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持っている場合や家族全員が「永住者」である場合などがあります。

おわりに

日本に在留する外国人について、5つの在留資格とそれぞれの在留資格で行うことができる活動などについて解説しました。
複数の外国人が同じ職業に就いていたとしても、個々の外国人の経歴や状況などによって、異なる在留資格である場合があります。
在留資格を知れば、在留資格からその外国人についての背景を垣間見れることがあり、そこから会話が弾むこともあります。

外国人は、在留資格がなければ、原則日本に在留することができません。
それほど外国人にとって、在留資格は重要なものです。

本記事が外国人と交流をされている方や外国人共生活動に関心がある方などの参考になれば幸いです。

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