日本語学校や大学などで学ぶ留学生、その多くは「留学」の在留資格で日本に在留しています。
留学生を違法に働かせた場合、留学生本人はもとより、働かせた側にも刑罰等が科されます。
本記事は、この在留資格「留学」を持つ留学生に焦点を当て、アルバイトとして雇用する際の注意点を挙げていきます。
資格外活動許可を取得しているか
在留資格「留学」では、本来アルバイトなどの仕事をすることは認められていません(就労不可)。
この「留学」の在留資格をもつ留学生がアルバイトをするためには、入管から資格外活動をしてもよいという許可をもらう必要があります。
資格外活動とは、「現に持っている在留資格で認められている活動ではない」活動です。
「留学」の在留資格で認められた活動(勉学)ではない活動(アルバイト)は、資格外活動になります。
(アルバイトは資格外活動となります。)
そのため、多くの留学生は資格外活動を行うために「資格外活動許可」を申請して、その許可を受けたうえでアルバイトをしています。
在留資格「留学」である外国人が、この「資格外活動許可」を入管から受けずにアルバイトなどをした場合は、違法な行為となり、資格外活動罪が成立します。
また、不法な就労活動をさせた者には、不法就労助長罪等が成立します。
雇入れの際の資格外活動許可の確認は必須です。
なお、留学生のなかには「家族滞在」や「定住者」などの「留学」以外の在留資格で日本の学校に通っている外国人もいます。
例えば、在留資格「定住者」であれば資格外活動許可を受けずにアルバイトができたり、在留資格「家族滞在」であれば在留資格「留学」と同様に資格外活動許可を取得しなければアルバイトができないなど、各在留資格によって相違点があります。
<補足> 「資格外活動許可」には、「包括的資格外活動許可」と「個別的資格外活動許可」があります。 本記事で扱っているのは「包括的資格外活動許可」についてです。 |
本来の在留資格で行うべき活動をしているか
「資格外活動許可」は、あくまで土台となる在留資格に基づく活動をしていることが前提で許可されます。
在留資格「留学」であれば、留学生として学校に通い、勉学に励んでいることが前提となります。
資格外活動許可を得て、資格外活動を行うとしても、それはあくまでプラスアルファの活動でなければなりません。
留学生がアルバイトを掛け持ちし、法令で定められた時間を超えて働くケースが少なくありませんが、違法です。
また、在留資格「留学」で学校に在籍していた外国人が学校を除籍や卒業等により、留学生としての活動が終了した場合は、原則、アルバイトなどの就労をすることはできません。
風俗営業関係の仕事はできない
「留学」の在留資格では、資格外活動許可を得ていたとしても、風俗営業に関係する仕事をすることはできません。
「仕事の内容」が風俗営業関係であることはもとより、たとえその仕事に従事していなくても、「仕事を行う場所」が風俗営業関係である場合は、「資格外活動許可」で就労することはできません。
例えば、スナックやナイトクラブ等で掃除などをする仕事も認められません。
アルバイトの時間が1週間に28時間以内であること(夏休みなどの期間は除く)
在留資格「留学」で在留する留学生がアルバイトできる時間は、1週につき28時間以内と制限があります。
この1週は、どの曜日から計算しても、1週間に28時間以内でなければなりません。
例えば、○月4日(月)から○月10日(日)までの時間数が28時間以内、○月7日(木)から○月13日(水)までの時間数も28時間以内でなければならないということです。
この「28時間以内」ですが、アルバイト先1か所につきではなく、全てのアルバイト先における合計時間数が1週につき28時間以内でなければなりません。
なお、留学生が通う学校が夏休みなどの長期の休み(※1)の場合は、1日につき8時間以内のアルバイトが認められます(※2)。
(※1 在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間)
(※2 その他、労働基準法による労働時間の制限などがあります。)
ハローワークへの外国人雇用状況届出
雇い入れた際は、ハローワークへ外国人雇用状況届出が必要です。
詳しくは、厚生労働省のホームページにてご確認ください。
厚生労働省ホームページ
「外国人雇用状況の届出」について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
在留カードの確認
外国人を雇い入れる際に、資格外活動許可の確認や各種届出などのため、在留カードの確認が必要です。
この在留カードの記載事項に関しては、出入国在留管理庁のホームページに在留カードの偽変造防止対策を含めた資料がありますので、ご確認ください。
出入国在留管理庁ホームページ
「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方
「在留カード」及び「特別永住者証明書」の偽変造防止対策
930001733.pdf (moj.go.jp)
また、残念ながら偽造在留カードを使用し、働くケースも少なからず存在しています。
偽造在留カードのなかには精巧に作られているものもあり、普段見慣れていない方であれば、外見から偽物だと見破るのは難しいと思います。
在留カードが本物か偽造かを調べる方法の一つに「在留カード等番号失効情報照会」(入管ホームページ)があります。
「在留カード番号」と「在留カード有効期間」を入力し、現物の在留カードが入管保有のデータと一致するかを照会して調べる方法です。
ただし、偽造在留カードのなかには、本物の有効な在留カード番号と有効期間を悪用したものもあり、照会結果に問題がないからといって、間違いなく本物の在留カードであるとはいえません。
出入国在留管理庁ホームページ
在留カード等番号失効情報照会
問合せ (moj.go.jp)
その他にも、偽造在留カードかどうかを知る方法として、在留カードを読み取る方法があります。
読取手段として、スマートホンを使う方法とパソコン(ICカードリーダー)を使う方法があります。
出入国在留管理庁ホームページ
在留カード等読取アプリケーション サポートページ | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
<余談> 知人などから借りた本物の在留カードを用いて、他人になりすまし、アルバイトを申し込むパターンがあります。 在留カードによっては、写真が経年変化等により擦れているなど、少しぼやけて見えることもありますが、本人と在留カードの顔写真が同一人物であることをしっかり確認する必要があります。 |
おわりに
不法就労は、不法就労をした外国人本人が罰せられることはもとより、雇用した事業主も不法就労助長罪等に問われる可能性があります。
不法就労助長罪の罰則は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」です。
事業主が不法就労にあたることを知らなかったとしても、そのことについて「過失がない場合を除いて」処罰を免れない、とされており、雇い入れる際はしっかりとした確認が必要です。
ひぐち行政書士事務所