
昨今、「外国人との共生社会」に向けた施策など、日本に在留する外国人に関する話題や活動が注目を集めています。日本に在留する外国人は、原則、何らかの在留資格を持って日本に住んでいます。
在留資格は、日常会話では「ビザ(VISA)」と呼ばれているものです。
(VISAは、正確には「査証」を意味する英語であり、本来在留資格とは異なるものではあります。)
この在留資格は、ある意味、外国人にとって日本に在留する理由を反映したものであり、根底となるとても重要なものです。
この外国人にとって必要不可欠な在留資格について、何となくイメージはつくけれども、よくは知らないという日本人は多いと思います。私自身も外国人に関連する仕事をするまでは、よく知りませんでした。
ごく限られた例ですが、在留資格について、よく知らなかった日本人が知り合いの外国人を助けようという気持ちからした助言や行動が、結果、法律に違反することであったという場合があります。
具体的には、副業が禁止されている在留資格であるにも関わらず、日本人が良かれと思い仕事を紹介し、その外国人が資格外活動違反をするというものです。日本人も資格外活動を助けた罪に問われます。
日本に住む外国人がどのような在留資格を持っているのか、またその在留資格はどのような人に許可がされているのかを知ることは、重要なことです。
本記事は、外国人が日本で「永住」を許可されるには、どのような要件を満たす必要があるのかなどについて、概要を解説します。
日本の「永住者」とはどういうものなのか、少しでも知っていただければと思います。
永住が許可される要件
永住者として在留が許可される要件は、出入国管理及び難民認定法(略:入管法:にゅうかんほう)に定められています。
その要件は、大きく
- 素行が善良であること
- 独立生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
の3つです。
通常、何らかの在留資格を持つ外国人が永住者の許可申請をする場合は、上記の3つの要件を満たさなければなりません。
ただし、この3つの要件は、外国人によって全てを満たす必要がない場合があります。
例えば、日本人や既に永住者となっている人の配偶者や子供が永住許可の申請をする場合は、3つ目の「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」のみを満たせばよいなどの定めがあります。
<補足> 上記の要件は、上から「1.素行善良要件」「2.独立生計要件」「3.国益適合要件」と呼ばれるものです。この「3.国益適合要件」には、事実上の「1.素行善良要件」と「2.独立生計要件」が含まれていることから、法令上「3.国益適合要件」のみの充足が求められていたとしても、基本的には「1.素行善良要件」と「2.独立生計要件」を満たすことが求められます。 |
上の3つの条件は、抽象的な表現ですが、具体的には以下のようなものとなります。
1.素行が善良であること
素行が善良であるとは、
「法律を守っている」「人の迷惑になるようなことをしていない」
ことです。
法令違反により、懲役などの刑に処されたことがある場合のほか、交通違反を繰り返していたり、何回か逮捕されたことがある場合なども素行が善良でないと判断される可能性が高いです。
2.独立生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
今後も日本で安定した生活ができると思われる、貯金などの資産があることや職業に就いていることです。
申請人が妻帯者などであった場合は、世帯全体で見て安定した生活が可能であるかを評価されます。
3.その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
その人が永住者になると日本の利益になる、というものですが、具体的には以下のような要件になります。
なお、以下は一般的な要件であり、個々の外国人によって満たすべき年数が違うなど、要件が違うことがあります。
⑴ 日本に継続して在留していること
原則として引き続き10年以上日本に在留し、かつ就労資格又は居住資格をもって直近において引き続き5年以上在留していることが必要です。
①「引き続き10年以上日本在留」
「引き続き10年以上」ですので、一度帰国し、再度日本に来るために在留資格を新規に受けた場合は、「引き続き」にはなりません。この場合、永住のための年数のカウント開始は、再度日本に在留を始めたときからとなります。
在留資格はそのままで一時的に帰国するような場合は、一般的に「再入国許可」を受けて出国しますが、この場合は引き続き在留しているとみなされます。
②「就労資格又は居住資格をもって直近において引き続き5年以上在留」
就労資格とは、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」、「特定技能2号」などのいわゆる就労系の在留資格です。
ただし、永住許可申請における就労資格には、「技能実習」や「特定技能1号」などの在留資格は含まれません。
そのため、例えば在留資格「特定技能1号」で働いた5年間の年数は、「引き続き10年以上日本在留」には含まれますが、就労資格での「引き続き5年以上在留」には含まれません。
また、「直近において引き続き5年以上」ですので、例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をもってエンジニアとして継続して5年間働いていた人が、大学院に行くために自らの都合で退職し、「留学」の在留資格になったうえで永住許可の申請をしても、「就労資格をもって直近において引き続き5年以上」の要件は満たさないことになります。
居住資格とは、在留資格「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」のことです。
これらの在留資格を持つ人などには、別途特例があり、この10年以上日本在留などとは別の要件があります。
例えば、日本人や永住者の配偶者であれば、婚姻が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上日本に在留していることが要件になります。
⑵ 公的義務を履行していること
各種税金や公的年金、公的医療保険の保険料を適正に納付していることです。
「適正に納付すること」ですので、未納はもちろんですが、遅れての納付も要件を満たしていないとされます。
また、住居地の届出や所属機関の届出などの届出義務も適正に行う必要があります。
なお、住居地の届出は、日本人が市役所などで転出・転入の届出をすることと同様の手続をします。
所属機関の届出は、転職などで就労先を変更したときなどに入管へ届出をすることです。
この他、法令で定められていることを遵守する必要があります。
⑶ 申請時に最長の在留期間をもっていること
各在留資格の在留期間は、入管法施行規則に規定されている在留期間から外国人に付与されます。
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の在留期間は、入管法施行規則により、「5年、3年、1年又は3月」と規定されており、そのいずれかが外国人に付与されます。
永住許可申請時に持っている在留資格の在留期間が、入管法施行規則で規定された最長の在留期間である必要があります。
上で挙げた在留資格「技術・人文知識・国際業務」では「5年」が最長の在留期間となります。
上記のように、永住許可の要件として、申請時の在留資格の在留期間が最長である必要がありますが、現在は在留期間が3年付与されていれば、この要件を満たすものとして取り扱われています。
⑷ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
法律で規定された感染症(エボラ出血熱など)の罹患者や麻薬中毒者などは、この要件を満たしません。
⑸ 著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること
上で挙げた3つの大きな要件の一つである
素行が善良であること
と重なるところがあります。
懲役などに処されたことがある、交通違反など違法行為を繰り返しているなどは、この要件を満たしません。
⑹ 公共の負担となっていないこと
原則、公共の負担となっていないことです。
上で挙げた3つの大きな要件の一つである
独立生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
に重なるところがあります。
なお、生活保護を受給しているなど、公共の負担になっていたとしても、その事情や状況などを考慮したうえで、要件を満たすかの判断がなされます。
⑺ その他
その他にも、「在留期間の更新をうっかり忘れ、不法残留となってしまったが、その後の手続きで合法的に在留している場合」など、特別に在留を許可された人などに対しては、別の要件があります。
おわりに
永住許可の法律上の要件(概要)は、以上のようになります。
上記は、一般的な要件ですが、例を挙げたように日本人や永住者の配偶者などには特例があり、要件が異なる部分があります。
この特例は、在留資格「高度専門職」のような「高度人材外国人」などにもあります。
本記事が永住者について知りたい方をはじめ、共生活動に関心がある方の参考になれば幸いです。
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