ベトナム語単語の基礎である人称代名詞について解説していきます。
人称代名詞とは?
「人称代名詞」とは、「私」や「あなた」、「彼」、「彼女」等の人を表す名詞のことです。
1人称は「私」、2人称は「あなた」、3人称は「彼・彼女」を表します。
ベトナム語の人称代名詞は、相手の性別や年齢、親密度等を考慮して、呼び方が変化します。
一般的に日常会話では他人であっても家族関係があるような呼び方をします。
例えば、家族関係もない「私(本記事を書いている私)」と「あなた(本記事を読んでいる方)」が街で会って話をするとします。
もし「私(筆者・男性)」が「あなた(読んでいる方・男性又は女性)」よりも年上であった場合、
「(私)は(あなた)にこれを渡す。」
という表現は、日本語で表すと、
「(兄さん)は(弟・妹)にこれを渡す。」になります。
もし「私(筆者・男性)」が「あなた(読んでいる方・女性)」よりも年下であった場合、
「(私)は(あなた)にこれを渡す。」
という表現は、
「(弟)は(姉さん)にこれを渡す。」になります。
もし、自分と相手の年齢差が、親と子くらい離れていれば、「私」を「おじさん・おばあさん」と言ったりします。
ベトナム語の1人称・2人称
1人称(私)、2人称(あなた)に話を絞り説明をしていきます。
上記のように、日常会話では、赤の他人であっても家族を呼ぶように「私」「あなた」と言います。
そのためには、まずは親族の名称について覚える必要があります。
親族名称の概要
<親族名称の例>
祖父:ông(オンー)
祖母:bà(バー)
父:bố , cha(ボー、チャー)
母:mẹ(メッ)
兄:anh(アイン)
姉:chị(チッ)
弟:em trai(エムチャイ)
妹:em gái(エムガーイ)
息子:con trai(コンチャーイ)
娘:con gái(コンガーイ)
孫:cháu(チャウ)
夫:chồng(チョン)
妻:vợ(ヴォッ)
「カタカナ読み」はあくまで参考です。
また、父親を南部では「ba」と言ったりします。
祖父母について、父方なのか、母方なのかを表す呼び方があります。
父方の祖父母は、「内」を表す「nội」(ノイッ)を付けて、
「ông/bà nội」
母方は、「外」を表す「ngoại」(ゴアイッ)を付けて、
「ông/bà ngoại」
と呼びます。
以上は、親族名称の一部です。そのほかにも、たくさんの親族名称があります。
下記に上に書いた親族名称について、少し補足します。
ベトナム語は後ろから前を修飾する
前段にベトナム語で「弟、妹、息子、娘」を書きました。
「trai」(チャイ)は男の子、「gái」(ガーイ)は女の子を表します。
そして、「em」は年下の兄弟姉妹の総称、「con」は「子供」を表します。
ここで「em trai」を見てみると、
「trai」(男)の「em」(年下の兄弟姉妹)→「弟」
同様に、「em gái」は、
「gái」(女)の「em」(年下の兄弟姉妹)→「妹」
となっています。
ベトナム語は、日本語と逆で、「後ろから前を修飾する」が基本となります。
「con trai」、「con gái」も同様に、後ろから修飾され「男の子」「女の子」となります。
同様に、孫を表す「cháu」も男であれば、「cháu trai」、女であれば「cháu gái」になります。
なお、「ông/bà」「bố/mẹ」はそれだけで性別を表すことができるため、「trai/gái」のような言葉は付けません。
「anh/chị」 に「trai/gái」を付ける場合もありますが、「anh/chị」だけでも性別を表すことはできます。
「私」と「あなた」の呼び方
ベトナム人は、「私」と「あなた」が赤の他人であっても、家族関係があるかのように呼び合うことが一般的です。
「私」と「あなた」をベトナム語でどのように呼ぶかをみてみます。
設定①
Aさん:男性
Bさん:Aさんより年上の男性
AさんがBさんに向けて話すときは、
「私」=「em」、「あなた」=「anh」
BさんがAさんに向けて話すときは、
「私」=「anh」、「あなた」=「em」
となります。
日本語的に「anh」は「兄さん」「お兄ちゃん」という感じです。
「ねえ、兄さん」、「兄さんは~」のようなニュアンスです。
なお、ここでの「私」「あなた」では、「em」に「trai」や「gái」は付けません。
また、年の差が大きく離れる場合は、日本語の「おじさん」や「おじいさん」に当たる呼び方をします。
設定②
Aさん:女性
Bさん:Aさんより年下の男性または女性
AさんがBさんに向けて話すときは、
「私」=「chị」、「あなた」=「em」
BさんがAさんに向けて話すときは、
「私」=「em」、「あなた」=「chị」
となります。
日本語的に「chị」は「姉さん」「お姉ちゃん」という感じです。
「ねえ、姉さん」、「姉さんは~」のようなニュアンスです。
ここでも「私」「あなた」では、「em」に「trai」や「gái」は付けません。
年の差が大きく離れる場合は、日本語の「おばさん」や「おばあさん」に当たる呼び方をします。
その他
上で書きましたが、相手との年齢差などにより、「おじさん」「おばさん」などに当たるベトナム語を使い分けて、相手を呼ぶます。
ここで、相手が相当年上だった場合どう呼ぶのかですが、自分の「おじいちゃん・おばあちゃん」ぐらいの人であれば、「ông/bà」で自分のことを「cháu」と呼びます。
※「ông/bà」はフォーマルな場面で、相手を呼ぶときに使う場合があります。一例として、ベトナムの公文書などにおいて、「あなたの住所」の「あなた」は、「ông/bà」と記載されています。
また、「おじさん」を「bác」「chú」と呼んだり、「おばさん」を「cô」などと呼んだりします。
私的には、どう呼ぶか悩ましい、両親の歳までいかない微妙な線の相手には「anh/chị」で自分を「em」と呼んでます。(正確にはふさわしくないと思いますが。)
「年寄り扱いして!」と怒られそうで、相手が自分自身である「私」を何て呼ぶかを探るのもよいかと思います。
基本的に、赤の他人同士では、「私」「あなた」に「bố(父)」「mẹ(母)」「con(子)」「chồng(夫)」「vợ(妻)」は使いません。
親子間、夫婦間では使います。
また、「chồng(夫)」「vợ(妻)」に関しては、結婚をしていない恋人同士が呼び合う際に使っていることもあります。
家族間での「私」「あなた」も今までと同様に使います。
例えば、
「ねえ、あなたゴミ捨ててきて。」→「ねえ、(chồng)ゴミ捨ててきて。」
「お母さん、私に飲み物ちょうだい。」→「(mẹ)、(con)に飲み物ちょうだい。」
という感じです。
「私」と「あなた」の万能な表現
「私」だけを表すベトナム語として、「tôi」(トイ)「mình」(ミン)などがあります。
そして、「あなた」を表すベトナム語として「bạn」(バンッ)などがあります。
「bạn」(バンッ)は「友」という意味です。
「tôi」はオフィシャルな(仕事上や公的な)「私」の表現で、相手にとっては親密さを感じないことがあります。
「mình」(ミン)は、ニュートラルな「私」、「bạn」(バンッ)もニュートラルな「あなた」の表現です。
この 「私」を表す「tôi」「mình」と「あなた」を表す「bạn」は、「私」「あなた」の使い分けに慣れていなかったり、迷ったり混乱したときは、重宝します。
同年齢くらいの相手の場合ですが、「私」=「tôi」「mình」、「あなた」=「anh」「chị」「bạn」を使えば良いと思います。
(他にも、同じくらいの年齢で親しく呼ぶ表現として、「cậu」(男女共通)があります。)
自分が年下でも「anh/chị」と呼ばれることがある
仕事上などでは、自分が相手より年下の場合でも、相手から「anh/chị」と呼ばれることがあります。
逆に、自分も年下の相手を「anh/chị」で呼ぶということですね。
日本でも、仕事の仲で会社が違っていたら、相手が年下でも「~さん」と敬って呼びますが、同じような感覚だと思われます。
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